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SEPPUKU Web

巣矢倫理子のブログです

宇宙王権論で読む「プリパラ」

※2015/08/18にnoteに投稿した記事の移行版 内容変更なし

 アイドルとは一種の権力である。人々の興奮を意図的に集める求心として、アイドルは確かに王だ。
宇宙王権論とは、シェイクスピア作品や山口昌男が観測したアフリカの王政を例に持つ、「循環する王政システム」である。旧王権の退位に始まり、次の王を決める群雄割拠の時代が訪れ、新王権が成立し、その新王権はやがて旧王権となって退位していく、という宇宙的ループなのだ。
今回は宇宙王権論でプリパラファーストシーズンを読みとき、いかにプリパラがすさまじいことをやってのけたかを説明したい。
そもそもプリパラは、「旧王権の退位」の状態から開始する。セインツの存在である。伝説的アイドルグループであったセインツが姿を消し、アイドル世界は王を失った。らぁらはそのタイミングでデビューを果たし、ライバルたちと切磋琢磨することとなる。これが群雄割拠の時代に当たる。そふぃを勧誘し、ドレッシングパフェと競い合い、しかしまだ新王権が立つにはあと少し足りない。
そこに現れるのがファルルである。
ファルルはまさに「王の資格」を持っていた。
ファルルは圧倒的な才能で周囲を圧倒する。その圧倒の方法とは、コピーである。周囲の才能をいいとこ取りにして頂点に立つ。極端に言えば周囲の人間の強制的な家来化である。他のアイドルに自分が乗った御輿を担がせるのだ。王が一人では王になれず、配下あっての王であるように、ファルルも周囲にアイドルがいなければアイドルの王ではいられない。
そしてファルルは、他のアイドルとは違い、肉体のないボーカルドールである。プリパラ世界で生まれたというプリパラのエリートだが、同時に他のアイドルが全員持っているはずの肉体は彼女にはないのだ。
集団を代表するものでありながら集団からは除かれている求心、それがファルルだ。

ファルルはそのあと、らぁらたちを圧倒してプリパラに君臨する。このとき彼女に与えられたのは<三種の神器>とも呼ぶべき王の証、パラダイスコーデであった。
しかしファルルはらぁらとパキったことで意識を失った。
これはなぜなのか?
余談だがこの事象についても考察してみよう。
パキるということは相手と対等であるということだ。つまり相手と平等な存在である友達になった瞬間に、ファルルは倒れてしまう。王でないなら死んでしまう、それがファルルと言えるのかもしれない。
しかし、プリパラは元々全員がアイドルという権力を前提として与えられる世界であり、そこで突出した一点の「権力を統べる権力」は生まれがたい。いわば常に群雄割拠の状態なのだ。
そういう環境のなか、周囲がファルルを王と認めても、<パキる>というプリパラに必須の儀礼はファルルを王座から引きずり下ろすことに他ならない。
人間が望んだことも、環境の上では咀嚼できない。しかしプリパラでの人間とは、システムに飲み込まれて活躍するアイドルで(プリパラという電脳空間へ行くことはシステムに飲まれるのと同義だ)、人間の意思でありながらシステムでもある。すなわちシステム内矛盾と解釈できる。
ファルルはプリパラのシステムから産まれた命であり、システムのなかで矛盾すれば、ファルル自身の存在が揺らぐことになってもおかしくないのだ。

らぁらたちはファルルを助けるためにパラダイスコーデをまとうが、光は途中で失われ、奇跡は起こらない。そこで、今までファルルを「ファルルさま」と呼んで崇めていたアイドルたちは、突如オープニングテーマ「Make it!」を歌いだし、「ファルル!」と呼び掛けて自分のトモチケを投げる。そこでようやくファルルは目覚めることができ、その場にいたもの全員のプリチケにパラダイスコーデが共有されるーー。
ここから何が読み取れるのか。
前述したシステム内矛盾で、ファルルの存在は揺らいだ。そこで行われたのは、アイドルたちがファルルを呼び捨てにし、自分のトモチケを投げる行為であった。つまり、ファルルを圧倒的な王として認めることをやめた。「人臣降下」させたのだ。
皇太子をやめ、天皇になれなかった光源氏のように、ただのアイドルへ身を落とした結果、システムはようやくファルルの「パキり」を受け入れた。
……のかと思いきや、そういうことではないのである。
そのあと、王の証であるパラダイスコーデが全員に共有されたことを考えてほしい。ファルルが王からアイドルになって全員対等になる=パキれるようになったのではなく、「全てのアイドルが王になった」ことで全員が対等になったのだ!
つまり、平民に戴かれた新王権の誕生で終わるべき宇宙王権論を、プリパラは最後に圧倒的に逸脱し、「全員が王である」という権力の大拡散で幕を閉じるのである。
以上がプリパラファーストシーズンを宇宙王権論から読みといた結果である。
このプリパラ世界の権力は、「カワイイ」ということだけだ。流行は変わる。つまり一瞬で権力の頂点が変わる。継ぐべき伝統がないのである。
先日はらぁらたち「ドレッシングフラワー」がサマードリームアイドルグランプリで優勝したが、次の大会ではまた違う権力の頂点が生まれるだろう。そういう意味で、あの世界はやはり宇宙王権論の宇宙的ループを持っている。そうなるように、システムができている。ただその入れ替わるスピードはあまりに早い。
プリパラセカンドシーズンには、「プリンス」「プリンセス」という明確な王権が明示された。どのように物語が展開されるのか、今後も目が離せない。