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SEPPUKU Web

巣矢倫理子のブログです

プリパラ劇中歌レビュー 攻撃、意志、多様性

感想・レビュー

※2015/09/06にnoteに投稿した記事の移行版 内容改変なし

TVアニメ「プリパラ」は、すべての少女をアイドルに変えるサイバー空間「プリパラ」を舞台にしたアニメーションである。あらすじから漂う気配の通り女子小学生がメインターゲットなのだが、ところがどっこい、劇中歌のクオリティが異常に高い。聞けば聞くほど沁みる。アイドルにありがちな薄っぺらい歌詞ではなく、「私はこう生きる!」という指針を叩きつけるような、凄まじい力強さを持っているのだ。
今回は実際にどの歌詞がどういいのかを解説していきたいと思う。
★太陽のflare sherbet(北条そふぃ)
歌詞はこちら
この曲は、のちに主人公チームに加入することになる天才アイドル・北条そふぃが、まだソロで活動していた頃から歌っていた彼女のテーマソングだ。
本当の自分を隠して自分のアイドルとしてのスイッチを強制的に切り替え、一人ステージに立っていた彼女の、パワフルな世界観を詰め込んだ一曲だ。ファンを引っ張っていく求心力に満ち満ちている。
「もし荒野の星 一人佇む光あればそれは私 たとえば深海たゆたう未来作り上げるのは私」というAメロは、あなたたちのアイドル、あなたたちを導く光こそ自分なのだ、という強烈なメッセージだ。心細くなっても、どう生きていいかわからなくなっても、この「太陽のflare sherbet」を耳にすれば行動する勇気が湧いてくることだろう。
Aメロは2番の方もさらに激烈だ。「ただ待つだけなら犬でもできる さあありったけの武器持って闇を切り裂くわ やがて希望と私の蜜月が来る」なんて、こんなに攻撃的な言葉を歌えるアイドル、好きになるしかないではないか。犬は何かに従う動物だ。待っているだけでは何も変わらず、主体性のない日々を流すだけである。そふぃは犬にならずに武器を手にして立ち上がれと呼びかけた。武器とは歌でありダンスであり、闇を切り裂く光そのものだ。そして闇を打ち砕く存在こそ、そふぃになぞらえるための「太陽」なのである。
この世に太陽が1つしかないのと同じように、そふぃも一人しかいない。自分を太陽に例えることができるアイドルが、この世界に何人いるだろう?「君を撃つ太陽のflare sherbet」とはそふぃの輝きであり、迷える者たちの闇を振り払う矢であった。体にまとわりつく何もかもを振り捨てて、今は私という太陽を見ろ。そふぃはそう言っているように感じられるのである。しかし前述の通り、これはアイドルとしてのそふぃで、この曲一曲だけしか持たないうちのそふぃは、まだ窮屈な檻の中に閉じ込められていたのであった。
★「No D&D code」(ドレッシングパフェ)
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ドレッシングパフェが死ぬほど好きだ。その理由は、彼女らの持つ純粋な暴力性と独立する存在感にある。
タイトルの「No D&D code」の「D&D」とは、DressとDreamを指す。すなわち、衣装も夢も、私たちは自分で選び取るし、指定される筋合いはない! という強靭な意志表示なのだ!
Aメロから見ていこう。「次々めくるめく出会いと別れに手を振る暇はない」。しょっぱなからこれである。巷にはお別れは寂しいねとか君のことは忘れないよといったテーマの歌があふれているが、ドレッシングパフェはそんな悠長なことは言わない。お前らに手を振ってる暇なんかねえんだよと叫ぶ。しかもデビュー曲の頭から!これで痺れない人間がいるなら出てきてほしい。
この態度は、歌詞が「戸惑い立ち止まる時間が惜しいわ がむしゃら全霊で人生は猛スピード」とつながっているように、ドレッシングパフェは目の前の事実をどんどん受け入れて先へ進む力を持っているということを意味している。とにかく前向きなのだ。「泣きたくなるのはそう 悔しいから その感情はPower」という通り、過去の出来事を引きずることなく、涙も全部次に跳躍するための踏み台にしていく、底抜けのハングリー精神が気持ち良い。
劇中のドレッシングパフェは、気に入らない校則があれば校長室に木刀持参で殴り込みに行き、怪獣相手にはたった3人で戦いを挑むなど、とにかく行動がはみ出していて攻撃的だ。
プリパラのテーマは「み〜んなトモダチ!み〜んなアイドル!」である。トモダチは小学生にとって巨大な財産であり、みんながトモダチになってくれたら、それは素敵なことだろう。私もそう思うしみんなそう思っている。ところがドレッシングパフェは、「信じられるのはそう 友達よりBestなJust Partner」と言ってのけるのだ。トモダチなんて甘い、私たちは次の場所へ行くのだと、彼女たちは言う。どれだけ進んだとしても、我々はドレッシングパフェの輝く背中を追うことになるのだ!
「Do it! Do it! Do it! やるなら1秒でも早く Dress codeを破るよ」「Dream codeなんてルールいらない」「Dream codeなんてジョーダンじゃない!」と叫び倒すサビはもう最高である。お前たちが決めたルールはいらない、私たちは私たちのスピードで私たちがやりたいことをやりたいようにやるんだという尖りに尖った意志がビンビンに伝わって来る。こんなにはみ出したドレッシングパフェも歓声で受け入れるプリパラもまた、素晴らしい場所にまちがいないのだ。
★HAPPYぱLUCKY(そらみ♡スマイル)
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結成からしばらく経ち、少しずつアイドルグループとしての成熟を迎え始めたそらみスマイルの名曲である。
彼女たちは一人一人がお互いの足りないところを補い合う素晴らしいグループだ。誰も相手を否定しないし、出来ないということを責めたりはしない。
「悲しい時こそ涙の声聞こぅ 怖くない側にいるよと君は笑ってくれた」「後ろ向きな気持ち なんて邪魔だった でも君はそれも私の欠片だと受け入れた」という歌詞が私は大好きだ。悲しいとかネガティブな気持ちに浸ってしまっても、それを否定せず、あなたの一部だからそれでいいんだという真摯な態度で向き合って受け入れる。こんなにストレートで美しいコミュニケーションはない。だからこそ「大好きよ 大好きだ ありがとう」という直接的な言葉を惜しげもなく歌えるし、「そうなんだ そうだよね わかってた 君と君が 私たちが 出会い信じ合えたら無敵だね」という最強の認識を共有できる。
「皆の力借りたらできるよ」「私のこれからを 君といく未来を ねえ ほら 前を見よう」とは、一人一人信じ合う絆を確信した言葉だ。
その上で「なるよ神アイドル」「『楽しい』のそのまた上の世界 トコトンがデフォルトです このまま突っ走るよ カンペキじゃないけどね カンペキ目指す!!」と野心的な目標を掲げる。私たちには、素晴らしい仲間とそれを受け入れるだけの絆があり、そして高い目標があり、それを叶えるためにトコトンやりぬく意志もある! ということをファンに叩きつけた、そらみスマイルの真髄を味わえる一曲なのだ。
★CHANGE!MY WORLD(ドレッシングパフェ)
歌詞はこちら
先に述べた通り尖りに尖ったアイドルグループ・ドレッシングパフェはNo D&D codeで自己紹介を終え、次のステージに来た。
そもそもドレッシングパフェは、非常に多様なものを抱えて調和している。この曲の要はメンバーの双子、ドロシー・ウェストとレオナ・ウェストであろう。一人称が「僕」の女の子・ドロシーと、プリパラに入れるほぼ唯一の男の子である女装少年レオナは、プリパラの自由さを象徴する存在である。
そして東堂シオンだ。彼女は囲碁の学生チャンピオンだが、自分以上の人間に出会えない囲碁の世界から一度身を引き、自分を高めるため、街角で見かけたプリパラTVに触発されてアイドルの世界に飛び込むという、根っからの求道者である。アイドルになる理由としてあまりにも謎だ。該当でそば打ちの映像を流していたとしたら今頃彼女はそば打ち職人になっていたのではなかろうか。不動のセンターではあるものの、それはシオンが天才的だからという訳ではなく、両サイドに収まると双子が丁度いいという理由でのセンターである。そういう部分を含めて、自由人たちが集合してしまったドレッシングパフェの不思議な調和は、この曲によく顕われているのだ。
「だれだってみんな持ってるの ホントの自分輝くPLACE 見つけたのなら教えてね 願った心の奥の想い!」というサビは、本当に優しいし、その態度を必然として持っているドレッシングパフェの生命力が美しい。押し付けがましくなく、ただ私たちは自分の輝ける場所にいるからあなたも自分の輝ける場所で輝いて、そういう場所にたどり着いたら教えて、という、ベタベタしない友情が心地よく思われる。相手に左右されない独立した自分を持つ彼女たちが、共有しない部分はしないし共有したい部分はしようよ!という明るい方向性と距離感を示してくれる。
ドレッシングパフェは装わない。「ホントの自分」が輝ける場所としてプリパラにいるし、「楽しくなきゃ意味がない」から「情熱のまま」踊る。それを見ていて巻き込まれてしまわないわけがない。だからドレッシングパフェは誘う。「『ボクだって』なんておもうより 『ワタシも』って一緒に、笑お!」「オンナノコも♪オトコノコも♪歌おうよ♪LET’S CHANGE MY WORLD!」という通り、多様な人間が自分たちを見て輝ける場所を探しに行ってくれることを、彼女たちとプリパラは願っているのである。
今回はこの4曲までで止めておくが、プリパラの劇中歌にはこのほかにも素晴らしいものがたくさんある。また余力があれば他の曲のレビューも書こうと思うが、まずは原曲を聴いてみてほしい。プリパラがある限り、世の中はまだ捨てたものではない。